コラム

ビジョンが持つ力(パワー)について(横山 武史さん)|100周年ビジョンコラム #01

組織や組織の構成員にとって、ビジョンを持つことの意味とは何でしょうか。多くの組織を見てきた中小企業診断士の視点から語ってもらいます。今回の執筆者は横山武史さんです。

「経営が未来を見据えれば、富を生み出す力は強まる」との記述が、日本経済新聞(2020年5月2日)にあります。「米マッキンゼーが米上場企業を対象に投資の安定度から『長期志向』の企業を抽出し、経営成績(01~14年の累積)を調べたところ、他の企業の平均よりも売上が47%、利益が36%多いことが分かった。」とのことです。
長年、中小企業診断士として、多くの中小企業に関わった経験からも、当面の売上や収益よりも、5年後10年後の長期経営目標を重視している企業ほど、高い割合で事業を伸長させていると感じています。

貴大学の描かれた100周年ビジョン「DAIKEI 2032」は、12年後のあるべき姿を明らかにした「長期志向」であります。輝く創立100周年を迎える原動力になると考えます。
教育機関である貴大学と企業とは同じではないとは思いますが、組織体としての共通部分も多く、長期志向であるビジョンの重要さは同じだと思うからです。

昨年2019年の新語・流行語大賞の年間大賞を覚えているでしょうか。「ONE TEAM」で、ラグビーワールドカップの日本代表から生まれた言葉です。
ラグビーワールドカップ日本代表は、日本代表といっても、日本以外に、ニュージーランド、オーストラリア、トンガ、韓国、南アフリカ、サモアという様々な出身国のメンバーで構成されていました。多様なメンバーをまとめるために、ジョセフヘッドコーチが2016年就任後に、スローガンとして唱えたのが「ONE TEAM」です。
「ONE TEAM」は仲良くするということではなく、「全員同じ目標に向かって1つになろう」ということで、ベスト8以上進出という目標に向かって、出身国や言語など様々な違いがあっても、違いを乗り越えて結束しようとの言葉であったようです。
また、この日本代表のチームソングは、カントリーロードの替え歌でビクトリーロード。歌詞は「ビクトリーロード この道 ずっと行けば 最後は笑える日が来るのさ ビクトリーロード」です。チームソングを歌うことで、「ONE TEAM」のスローガンのもとで厳しいトレーニングをしていけば、ベスト8以上の目標を達成できるとの「あるべき姿」を共有していたように思います。結果、スコットランドなどの強豪国に勝利し、ベスト8という目標を達成しました。

長期志向のビジョン(あるべき姿)には、構成するメンバーを結束させる力(パワー)があるのではないでしょうか。
貴大学の教職員の皆さまが、100周年ビジョン「DAIKEI 2032」の教育ビジョン、研究ビジョン、社会実践ビジョン、大学組織・運営ビジョンの4つのビジョンを共有することで、結束する力(パワー)を生み出すように考えます。そして、結束する力(パワー)は、100周年に向かうビクトリーロードを歩む原動力になることでしょう。

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執筆者略歴

大阪経済大学非常勤講師

横山 武史(よこやま たけし)

中小企業診断士 健康経営エキスパートアドバイザー
(一社)大阪府中小企業診断協会 副理事長