座談会

異なる文化・価値観にふれることが創発のスイッチを押す。国際交流によって生まれた、新しい自分。

創発とは、予期せぬものとの出会いや異質なものとのぶつかり合いから生まれるもの。留学や国際交流への参加は、まさに創発を生み出す環境に身を置くことだと言えるでしょう。海外渡航ができるようになって、本学でも国際交流が再開しました。そこで、留学を経験した学生と国際部に関わる教員・職員にそれぞれの体験についてお話していただきました。

お話を伺った方

森 詩恵さん

副学長・経済学部教授。経済学博士。社会福祉・高齢者福祉をキーワードに経済政策や社会政策を研究。国際部の業務も担当しており、協定大学の拡充や学内の国際化推進に取り組む。

矢島 克也さん

国際部 国際交流課長。国際部にて認定留学や派遣留学をはじめとする中長期留学を希望する学生のサポートを担当。山本学長や森副学長と共に学内の国際化推進にも取り組む。

中村 凜々華さん

経済学部3年生。認定留学でニュージーランドのワイカト大学へ。学部では花登ゼミに所属し、ゲーム理論を用いた交渉戦略について研究している。

藤井 緋音さん

経営学部3年生。3年の春学期に派遣留学で韓国の仁徳大学へ。学部では遠原ゼミに所属し、韓国企業と日本企業の比較について研究している。

コロナが明けて、海外へ行きたい思いを実行

――まずは学生のお二人から、留学を決めた理由をお話しください。

藤井 コロナ禍で時間ができたときに、韓国ドラマをたくさん見ていたんです。そこから韓国に興味を持つようになり、第二言語に韓国語を選んでみたら、意外と日本語と文法が似ていてすんなり自分の中に入ってきたんですよ。その後、本学に韓国への留学制度があるのを知り、リアルな韓国を自分の目で確かめたいと考え、留学に行けるよう勉強をがんばりました。

中村 私は高校時代に英検2級を取るなど、結構、英語の勉強をがんばっていたんですが、コロナや世界の情勢を知るにつれて、留学に不安を感じていたんです。でもコロナが収束してきた時に父が「留学行ってきたら?」と背中を押してくれたことで決断しました。カナダの大学と悩んだのですが、最終的には本学と提携していたニュージーランドのワイカト大学に決めました。

 お二人はコロナが落ち着いた2023年度に留学に行かれたんですね。私も国際部の業務の一環でこの夏に、北米の協定校へ訪問してきました。

矢島 僕も近々学長と一緒にワイカト大学を訪問します。現在の留学プログラムではワイカト大学の語学学校での授業がメインなのですが、半年は語学学校で英語を、残りの半年を大学の学部で専門分野について学べるような道筋をつけられたらと考えています。

中村 そうなんですね!ワイカトに留学した時に、語学学校に通ったあと1ヶ月間だけ大学本校で学ぶという人が実際にいました。

 やっぱりそうできる方がいいですよね?

中村 そうですね。めちゃくちゃ英語をがんばらないといけませんが!

もし再び留学のチャンスがあれば、現地の地域経済を学んでみたいと話す中村さん
週1回、放課後に実施される大学本校の学生と交流する会にて。ニュージーランドのこと、大学のことなどたくさん教えてもらったそう

 意外と自分の得意分野はしゃべれるものですよ。私は学会でイギリスに何度か行っていますが、専門分野については英語の論文を読んでいるのでなんとか話せるんです。でも雑談は本当に難しいなと感じます。

中村 私は日本語でも人に質問したりするのが苦手なんです。それが英語になったらなおさら難しくて、会話には一番苦労しました。

藤井 私も最初は会話したくても、聞き取ることに必死すぎて相づちを打つのが精一杯でした。

海外経験を通じて得た気づきや自分の成長

――大経大が国際化や国際協定を推進されている背景についてお話ください。

 本学は今、創発が生まれる環境の構築をめざしています。創発とはさまざまな価値観や考え方が混じり合って生まれてくるのですが、いろんな国の方々が本学に来たり、本学の学生が海外を訪れたりすることも多様な価値観にふれるきっかけになります。だから、大学では協定校や留学先でできることを増やそうとしています。また、中村さんが留学に不安を感じていたと話してくれましたが、学生さんが安心して留学に行けるよう、大学からのバックアップの強化にも力を入れています。

韓国やイギリスの研究者と交流がある森副学長。自身が苦労した経験も交えながら、展望を語る

矢島 僕は大学内の国際化にも力を入れたいと考えています。本学には語学カフェというアウトプットの場がすでにあるのですが、開催日時が限られています。しかし他大学を視察すると、学期期間中いつでも利用できるようなところもあり、大変にぎわっています。留学生と日本人が互いに母語を教え合ったり、日本人同士で語学の勉強をしたり、普通に楽しくおしゃべりしたりと、さまざまな目的で利用していて、まさに僕がイメージする創発の場だと感じました。本学の語学カフェもそんなふうにしたいなと考えています。

藤井 私も韓国語カフェを利用したことがあるのですが、時間が決まっていて予定が合わないことも多かったんですよ。だからもっと使いやすくなるとうれしいです。

――学生のお二人は、留学を通じて何か自分の考え方などが変わるような体験はありましたか?

中村 留学後半に、アカデミックコースという日本人と中国人・ベトナム人の8人からなるクラスで学んだのですが、他国の学生たちは授業への積極性が日本人とは全然違っていて刺激を受けました。授業中にわからないことがあるとみんなバンバン質問しますし、グループワークでもめちゃくちゃ積極的に意見を言ってくるんです。私は引っ込み思案な性格なんですが、その雰囲気に影響されて、自分の意見をはっきり主張できるようになりました。

あと留学を通じて感じたのが英語で思考するおもしろさです。専門分野についての長文を読んで議論したりするのですが、日本語だとつい流し読みしちゃうところを、英語だと単語の意味や文章の流れを考えながら読んでいくので、日本語以上に深く知識が定着します。例えば「このテクノロジーで将来どういうものを作れるか」というお題で議論したりもしたのですが、英文の内容をじっくり読み込んだうえで考えていくため、今後の社会について自分の意見を持つことにもつながりました。もともと留学の目的の一つに「自己成長」を掲げていたんですが、達成できたのではないかと思います。

藤井 私は韓国人の学生に混じって授業を受けたのですが、性格診断テストなどを使って自己分析した上で、自分の生活スタイルや趣味・嗜好をプレゼンするような授業が印象的でした。日本にいると自分を多角的に見つめることがまずないので…。あと私が留学中に出会った範囲ですが、韓国の人の場合、関西人に似てるというか、自分を持っているのを感じました。結構友だち同士でも「これは嫌い」とか、ちゃんと言える人が多かったです。

留学先では、先生たちのきめ細やかなサポートや声かけに助けられたという藤井さん
韓国語の授業で、日本とモンゴルからの留学生全員で東大門へ。博物館なども訪れ、この日のことを動画に収めてグループごとに編集・提出する課題にもチャレンジ

 私がこれまでお会いした韓国の先生方や友人はすぐに「ケンチャナヨ」って言ってくれますね。「問題ないよ」とか「大丈夫」と言う意味なんですが、私たちからしたら全然大丈夫じゃなさそうでも「ケンチャナヨ」と言って気にしない(笑)

藤井 たしかに!サービス精神が旺盛な方が多いようなので、食事に行っても「ケンチャナヨ!」と言ってすぐにごちそうしてくれました。就職の話をしても、韓国では国内で就職するのが難しいそうで、海外で就職したいという子が結構多かったんです。その前向きさに刺激を受けました。

矢島 非常に興味深い話で勉強になります。今ちょうど韓国に行きたいという学生さんから相談を受けていまして。藤井さんや中村さんのように海外に行かれた方の体験談をなるべくシェアして、オープンに伝えられる環境を大学内に作っていきたいですね。

海外に行くことだけが国際交流ではない。興味を持ったそのときが、創発の始まり

――最後に、国際交流によって生まれる創発について、皆さんのお考えを聞かせてください。

 中村さんと藤井さんのお話を聞いていて、すでに二人とも創発を経験しているのだと感じます。海外という新しい場所に踏み出したり、異なる文化にふれて自分について考えたり、周りから刺激を受けて変化したり。創発って実際に集まってワイワイ議論するのも大切ですが、今ならネット上でもできますし、極論をいうと一人でも創発できると思うんです。お二人は留学経験で得たものをベースに今後は自ら中心となって創発の場をつくり出せるでしょうし、いろんな人たちに共有することで、さらなる創発につながると思います。

あと、今回の座談会では、留学したお二人にお話を聞いていますが、本学の学生に伝えたいなと思うのは、海外に行かないと国際交流ができないわけではないということです。語学カフェなどを通じて、本学にいて海外からの留学生と交流するだけでも全然いいと思っています。「英語ができないから参加しない」という考え方ではなく、どんな形でもいいので、今までふれたことのないモノ・コト・場所に参加してほしいですね。「大経大でみんなと英語で話したのが楽しかったな」という具合に、本学での体験が将来何かのきっかけになれば十分かなと思っています。

あとは、チューター制度のような支援システムをさらに充実させて、海外からの留学生の受け入れにも力を入れたいですね。

矢島 僕は2022年に、環太平洋の大学関係者、学生支援や国際交流に関わるメンバーが集まるオーストラリアでの国際会議に1週間参加させてもらいました。多くの大学関係者が、コロナ後の大学の役割を国レベルではなく世界レベルで考えていることに衝撃を受けました。世界の課題を自分ごととしてとらえて、じゃあ大学はどう変化していくかという議論があり、変化に前向きな気持ちになったんです。

ほかにも、マレーシアとシンガポールからの参加者と仲良くなりました。互いの国の教育事情について意見交換したのですが、そこでシンガポールやマレーシアの大学では英語で授業を行うのが一般的なことだと知りました。シンガポールでは英語が共用語ですし、マレーシアでは第二言語だからなんですね。欧米だけでなく東南アジアも留学先として魅力的なことを、学生さんたちに伝えていきたいと思っています。

帰国後もシンガポールの方と再会したという矢島さん。海外の大学関係者と対面で話すことのインパクトは大きいという

――学生のお二人は、卒業後も海外に行ってみたいとお考えですか?

藤井 将来は韓国で働きたいと思っています。ファッションなど韓国の流行をいち早く日本に伝えるような仕事をしたいなと。留学中に韓国で働くことの難しさを聞きましたが、だからこそがんばろうと思いましたし、今後も韓国に足を運んで人脈を広げたいと考えています。

中村 私も短期間でいいので海外で働いてみたいと思っています。知り合いにワーキングホリデーでニュージーランドに行って、今も現地で暮らしている人がいるので。日本食さえあれば私はどこにでも行けます!

 お二人は「海外に行こう」というスイッチが自然に入って、新たな取り組みに踏み出す一歩が軽くなっていますね。私たちの役目は、学生さんたちにそのようなチャレンジに対してそっと背中を押してあげられる、創発のきっかけにつながる仕組みを作ることなのだなと改めて感じました。今日はすてきな気づきをありがとうございました。