創発レポート

学生の相互成長と教職員との連携が支えるオープンキャンパス。高校生にも変化をもたらす創発の好循環とは。

2023年度の来場者が5,655名(4回合計)を数えた大阪経済大学のオープンキャンパス。満足度調査でも「大変よかった:76.5%、よかった:21.3%(2023年7月16日開催実績)」と高い評価を得ています(参加者の感想はこちら)。またこの評価を支えているのが、運営に大きく関わっている学生スタッフです。オープンキャンパスの準備、開催、ふり返りを通じて、彼らはどんな気づきや互いの成長を発見してきたのでしょう。入試部職員を交えて座談会を開き、創発のヒントを探ります。


教育ビジョン

自ら学びをデザインできる学生を生み出す

予測困難な時代を生き抜くために、主体的に学ぶ姿勢をはぐくみます。
多様な体験で得たものを発表・議論する場を設け、さらなる学びへ発展させます。

お話を伺った方

浜上 結羽さん

経済学部4年生。2023年度のオープンキャンパスでは班リーダーとしてスタッフ間の調整を担当。就職活動では今年5月に大手商社に内定している。

一色 彩佳さん

経営学部3年生。コミュニケーション能力が高く物怖じしない性格で周りからの信頼も厚い。今年のオープンキャンパスでは班のリーダーを務める。

松尾 勇輝さん

経済学部2年生。産業・金融分野に関わるコースで学ぶ。デザインが好きでオープンキャンパスでは案内ツールのデザインなども担当。

松村 剛さん

入試部職員。オープンキャンパスの業務全般や、学生募集に関わる受験生向けサイトの運営、広報媒体の作成などを担当。学生との関わりが多い。

小林 沙耶さん

入試部職員。入試実施に関わる業務を主に担当。また入試部の広報担当としてSNSの運用にも関わり、学生が出演する投稿動画なども制作している。

学生が主体となってオープンキャパスを運営

――皆さんがオープンキャンパスに関わるようになった経緯を教えてください。

浜上 2年生の時に、本学の学生ピアサポート団体「DAIKEI Oritor’s Group for Students(略称:DOGs)」に所属することにしました。というのも、同級生にとてもリーダーシップの高い子がいて、彼女がDOGsで活動していると知ったことがきっかけです。オープンキャンパスは、DOGsのメンバーを中心とした学生スタッフが運営しているので、自然と関わるようになりました。

一色 高校3年生の時に本学のオープンキャンパスに参加したのですが、キャンパス内で迷ってしまい困っていたら、DOGsの学生スタッフの方に声をかけてもらい案内してもらったんです。「こんな人になりたいな」と思い、DOGsメンバーとしてオープンキャンパスに関わっています。

松尾 僕も高校生の時にオープンキャンパスに参加し、学生スタッフの姿から活気を感じとても良い印象を持っていました。一色さんと同じくそんな先輩方に憧れてDOGsに入り、オープンキャンパスのスタッフとしても活動しています。

松村 入試部の業務の一つとして、オープンキャンパス全般に関わっています。オープンキャンパスでは学生スタッフの活躍が重要なので、準備段階から一緒にがんばっていこうという心がけで取り組んでいます。

小林 私はオープンキャンパスには業務として直接関わることはないのですが、合間に顔を出して学生さんたちに声をかけ、広報活動に協力してもらうなど仲良くさせてもらっています。

左から浜上さん、松尾さん、小林さん。スクールカラーのユニフォームもチームの結束力を高める

――今まさに準備に取り組まれているところだと思いますが、学生スタッフの皆さんはどのような役割をされているのですか? 

浜上 オープンキャンパスの準備は1~2ヶ月前ぐらいから始めていて、週1回の定例会に全員が集まり進捗状況を話し合います。当日のプログラムは事前に決まっているので、運営上の課題など細かい点を話し合うのがメインですね。また当日は3班にわかれて、フリートーク、キャンパスツアー、学内各所での誘導を順番に担当しています。2023年度のオープンキャンパスでは私は班のリーダーを務めたので、別の班のリーダーたちと相談しながら、人員の調整などを行いました。例えばキャンパスツアーに参加者が集まりすぎてしまったら、そちらに対応できるスタッフを手配するといった内容です。

キャンパスツアーのフラッグをもつ学生スタッフたち

一色 私は、2023年度は班のメンバーとして、フリートーク、キャンパスツアー、誘導のそれぞれを担当しました。心がけていたのは、迷っている参加者がいたら一番に声をかけることです。自分自身が迷って不安になった経験から、高校生を助けてあげたい気持ちが強くて…。今年は3年生なので、浜上先輩が昨年担当したようなリーダー役を務めます。

松尾 僕は1年生だったので手伝い程度ですが、プログラムの開催場所を知らせる案内チラシなどの広報物作成に関わりました。当日は先輩方と同じように一通りの業務を担当しました。

松村 DOGsのメンバーは約130名なのですが、帰省など用事がある方を除く多くの学生がオープンキャンパスに参加しています。そちらに加えて当日のみ参加するDOGs以外の学生もいるので、結構大所帯ですね。だからこそできることがあって、オープンキャンパスの開場時間に、正門前でスタッフが一列に並んで来場者をお出迎えするんです。これがなかなか好評なんですよね。

来場者をみんなでお出迎え

2023年度のアンケートの満足度は「大変よかった」「よかった」の回答者が約98%に上る結果でした。毎年そのような高評価をいただいており、この3人のような学生スタッフの質の高さが数字にあらわれていると思います。

来場者からの要望・質問が、オープンキャンパスを深化させる

――大阪経済大学のオープンキャンパスの魅力はどのようなところにあるのでしょうか。

松村 本学の学生スタッフは、ホスピタリティや主体性に長けている学生が多いんですね。困っている人がいれば率先して声をかけたり、自分ではわからない質問があっても、それがわかる別のスタッフや職員を連れてきて、参加者とつないだりすることもできる。与えられた仕事以上のおもてなしができる学生たちの姿を、来場者の方にご覧いただければうれしいですね。

小林 私が思う本学の一番の魅力は、アットホームな規模感です。私は他大学出身なのですが、だからこそ本学の職員になって、こんなにも学生と教職員の距離が近いのかと驚かされています。またそうしたリアルな魅力は、大学案内などの冊子やWEBだけでは伝わらないので、そこを感じていただくのもオープンキャンパスの狙いの一つですね。

松村 もちろん課題もあります。部活動を見たい、このカリキュラムや資格について知りたいなど、さまざまな要望が寄せられるのですが、その場に担当者がいないときちんと情報提供できない場合もあります。部署間の連携や部活動との協力関係をもっと強化しないといけないと感じています。

小林 個人的に思うのは、オープンキャンパスの参加者が、大学らしい探究的な学びをもっと体験できると良いのではないかなと。今でも十分満足度は高いと思うのですが、模擬授業をもっと発展させることができればと思っています。

松村 模擬授業は来場者からの要望が非常に高く、2023年度から全回プログラムに加えています。教員による模擬授業だけでなく、学生から具体的にどんな勉強や活動を行っているかということや、学内外のコンテストで受賞した経験なども話してもらっています。本学は勉強に力を入れている学生も多いので、このような発表を通じて、本学に入学すると数年後の自分はこうなれるんじゃないかという良いイメージを持ってもらいたいと思っています。

模擬授業では教員はもちろん学生も活躍

――学生の皆さんは、どのような気持ちでオープンキャンパスに臨んでいますか?

浜上 オープンキャンパスに参加する高校生の多くは、まだ志望校が決まってない方がほとんどです。そのため、本学のことをもっとよく知ってもらい、志望度を高めてもらいたいという気持ちです。

松尾 せっかく休日を使ってもらっているので、いい思い出をつくってもらえるようにしたいですね。

一色 フリートークではいろいろな質問をされるので、とにかく全部回答できるようにという意識でやっています。ゼミについての質問も多いのですが、2023年度はまだ自分がゼミに入っておらず、わからないことは先輩を頼って対応していました。

浜上 ゼミのほかにも、入試、就職活動についての質問はたくさんいただきます。驚いたのは、そもそも「大学ってなんですか?」という質問が多いことです。どのように説明すればよいと思いますか?

小林 高校と大学の違いについて時間割を使って説明することが多いですね。「大学は、学部カリキュラムの中であれば自分で好きな授業を選んで時間割を作ることができる。だからこそしっかりと学部のゼミや授業内容を調べて興味がある学部を選んでほしい」と。

松村 時間割をつかって授業以外のスケジュールの話もします。「高校と違って授業科目数が少ない分自由な時間が増える。その自由な時間を使って、いかに自分の成長につなげる経験ができるかが大事。自由が増える代わりに自分への責任も増えるんだよ」という話をします。

フリートークで学生のリアルな声を聞く参加者たち

浜上 抽象的な質問は悩みますが、自分たちにとっては当たり前のことを考えるきっかけになりますね。よくある質問については、マニュアル化して学生スタッフで共有しています。私が2年生の時につくった方がいいということになり、毎回改善を重ねています。

一色 もちろんマニュアルはありますが、学生には自分や友だちの経験談を交えた説明をしています。入試についての質問は、自分の班の中で、推薦入試、一般入試でそれぞれ入学したメンバーを把握して、対応してもらっています。

松尾 僕はキャンパスツアーの合間の話題に悩んでいます。建物の説明が終わって、次の建物に行く間に何を話そうかと…。話題のストックをたくさん用意しなきゃと思っているんですが、なかなか思いつかず。浜上先輩はどうされていますか?

浜上 私の場合はまず「今日はどこから来てくれたの?」から始まって、「他大学のオープンキャンパスにはどれくらい行っているの?」と質問して、そこから話が盛り上がる感じですね。意外と高校生より保護者の方が積極的に話しかけてくださるので、言葉づかいに気をつけながら、お話するようにしています。

松村 学生スタッフの皆さんは、いつも自分に何かできないか?と考えて対応してくれているんだと改めて感じますね。

左から松村さん、一色さん。よりよいオープンキャンパスをめざす学生スタッフや職員間の対話も、創発の場

来場者、学生、教職員の関わりが創発を促す

――オープンキャンパスを通じて、自分たちが成長したと思うことや、何か考え方や視点が変わったことがあれば教えてください。

一色 松尾くんが、どんどん意見を言ってくれるようになったと感じています。1年生の頃は控え目だったけれど、今は気軽に話すこと自体も増えたし、主体的に行動するところが目に見えて変わりました。

松尾 主体性は自分でも伸びたところだと感じています。先輩たちを見ているうちに、何か大学に貢献したい、仲間の役に立ちたいと言う気持ちがむくむくと湧いてきて、自分から仕事を取りに行こうという姿勢に変わりました。

浜上 一色さんはコミュニケーション能力、特に年下と関わる能力がすば抜けていると思っています。今は班のリーダーを務めていますが、側で見ていても班全員が楽しそうですし、オープンキャンパスでも、さっき話していた心がけどおり、積極的に高校生に声をかけていますね。もし私がリーダーとして困ったら、まず相談したいのが一色さんですね。

一色 浜上先輩を見て学んできました!人と話すのは元々得意だったんですが、保護者の方への対応や、団体で来た高校生がはしゃいでしまって言うことをなかなか聞いてくれない場合などの対応力なども鍛えられました。

浜上 私はトラブルがあっても的確に指示を出したり、学生スタッフのモチベーションに差があれば声かけをしたりといった、リーダーとしての経験が自信につながりました。このような個人個人の成長とは別に、オープンキャンパスが終わると毎回反省会をして、良かったことと反省点をすべてホワイトボードに書き出して、次に向けてどう改善するかという話し合いもしています。そうして回を重ねるごとにオープンキャンパスの運営力をバージョンアップさせています。

松村 毎回毎回、みんながよりレベルアップしているのを感じています。基本的に職員が学生に対して指導や教育をする機会は滅多になく、上級生が下級生に対してオープンキャンパスの運営方法を教えていて、それが本当にいいサイクルで回っています。

浜上 でもオープンキャンパスで誰よりもやる気に満ちているのが松村さんですよね?! 参加者を迎える列の一番前でニコニコしているのを見ると、私たちも元気をもらって「がんばるぞ!」って気持ちになるんですよ。

松村 こうした距離感の近さが、やはり本学の魅力ではないでしょうか。学生さんたちはアイデアをたくさん持っているので、それが言えないような、萎縮してしまう距離感だと、私たちもせっかくのアイデアを吸収できず、創発も生まれないと思っています。そのため、私自身は常に学生と近い距離でいたいと心かげていますし、そこに気づけたのは、オープンキャンパスで学生と関わるようになってからですね。

松尾 学生スタッフをしていると、フランクに交流できる雰囲気を肌で感じます。だからこそ僕も活発に意見を言えるようになったし、他の学生も大学に貢献したいと思って率先して行動できるんじゃないかなと思います。

一色 私は、オープンキャンパスで高校生からのさまざまな質問に対応するうちに、大学生活や大学での学びについて深く考えずにきた自分に気づかされました。高校との違いや、違うからこそ自分なりにどう取り組むべきかなど、今後はさらに意識しながら大学生活を過ごしたいと考えています。そうすることで、高校生にもっといいアドバイスができるようになりたいです。

小林 その気づきも創発ですね。オープンキャンパスで一色さんたちが高校生と接することで、学生にも気づきがありますし、高校生の方も、大学生活や将来に対する意識が変化するかもしれません。今後はより一層、学生スタッフの皆さんや先生方、職員が手を携えながらオープンキャンパスを盛り上げていきたいですね。

一人ひとりの思いが、満足度の高いオープンキャンパスをつくりあげる

Hints for SOUHATSU

創発につながるヒント

今回の座談会で改めて気づかされたのが、学生と教職員との距離の近さです。松村さんからは「職員は学生のサポートという立ち位置だけでなく、本学をより良くするために、学生と共に創るという要素が多いと改めて気づいた」というお話も。大学に貢献したいという学生の気持ちを受け止め、互いにモチベーションを上げていくことが、オープンキャンパスの満足度の高さにもつながっているのでしょう。
また、来場者と接することで気づく改善点をみんなで振り返り、対話することが、学生一人ひとりの成長や学生スタッフ全体の創発につながっていました。高校生もそんな先輩の姿に憧れ、本学自体のイメージ向上にもなるという循環が生まれているように感じます。本学のオープンキャンパスが高校生の夢や希望を揺さぶり、大学生活での創発につながることがこれからも期待されます。