学生主体の新入生オリエンテーションを実現したDOGs。その活動に刺激を受け、新入生の中にも生まれた創発の芽。
DAIKEI Oritor’s Group for Students(DOGs)は、ホスピタリティやピア・サポート精神(仲間同士の助け合い)を養い、学内のさまざまな場面において他の学生に好影響を与える人材を養成することを目的とした団体として2021年9月に発足しました。現在、135名が所属し、主に新入生の支援、新入生オリエンテーション、オープンキャンパスの企画・運営や他大学との交流などを行っています。2024年度の新入生オリエンテーションでは企画段階から当日の運営までDOGsメンバーが力を合わせ、数日間にわたるプログラムをやり遂げました。DOGsの役員を務める学生と、DOGsの活動をバックアップする教育・学習支援センター(SCTL)の職員に、今回の取り組みについてお話していただきました。
教育ビジョン
自ら学びをデザインできる学生を生み出す
予測困難な時代を生き抜くために、主体的に学ぶ姿勢をはぐくみます。
多様な体験で得たものを発表・議論する場を設け、さらなる学びへ発展させます。
お話を伺った方
田中 健斗さん
経済学部3年生。DOGs代表。新入生オリエンテーションでは総合統括を務めた。リーダーとして高い統率力を発揮し、メンバーから厚い信頼を寄せられる。
佐井 美月さん
経営学部3年生。DOGs副代表。新入生オリエンテーション「履修ガイダンス」統括担当。DOGs参加のきっかけは、新入生をサポートする先輩への憧れから。
牧野 莞大さん
経済学部3年生。DOGs副代表。人の役に立ちたいという思いからDOGsに参加。新入生オリエンテーションでは「新入生交流会」の統括を担当した。
起 ほのかさん
経営学部3年生。DOGs渉外・広報担当。大学生活でしかできないことを、とDOGsに参加。「履修ガイダンス」のアイスブレイク企画班のリーダーを務めた。
松山 誠司さん
教育・学習支援センター事務課長。学生生活のさまざまな場面にアンテナを張り、学生の成長を促す取り組みを企画。
田中 美也子さん
教育・学習支援センター事務課 学習支援担当。学生が主体的に学べる新たな取り組みの数々を主導し、成長をサポートする。
DOGsメンバー間で切磋琢磨し、新たなチャレンジ
――学生主体で新入生オリエンテーションを実施することとなった経緯や、皆さんの役割を教えてください。
松山 2021年以前の新入生向けガイダンスは教務部職員が担当していまして、新入生は職員の説明を大教室でじっと聞いているという状況でした。これをより効果的にする方法の一つとして、長年実施してきたもののコロナ禍で途切れてしまった新入生キャンプの良かった部分を取り入れ、上級生と新入生、あるいは新入生同士が交流する形に変えたい、と考えていました。当時SCTLで、学生が主体となって新入生をサポートする組織を立ちあげる企画をしていたので、賛同して協力しました。
田中(美) 2021年9月にDOGsを立ち上げ、学生が主体的に動けるよう、環境を整えてきた私は、DOGsメンバーの“お母さん”みたいなもの。さまざまな相談にのっています。他部署との調整などは行っていますが、企画内容や運営方法を考えるといった活動の主体は学生です。今年度、新入生全員を対象にした新入生交流会をDOGsが担当したのは初の試みでした。早期合格者対象の入学前交流会の担当だったので、イベントの規模が大きくなってかなり大変でしたね。
田中(健) 2023年11月頃、その計画を聞いた時は驚きましたよ!対象人数がこれまでの10倍以上になるので、どのように進めていったらいいのか想像もつきませんでした。
田中(美) DOGsも3年目になり人も組織も育ってきて、できると思ったから任せたんですよ。
田中(健) 今回の新入生オリエンテーションでは、代表の私が総合統括、佐井さんが履修ガイダンス「大経大の歩き方」の統括、牧野君が「新入生交流会」の統括、起さんが広報活動を担当しました。他のメンバーは、少人数の班に分かれており、リーダーである「メンター」を中心として班ごとに役割分担して取り組みを進めていきました。上級生が新入生のさまざまな相談にのる「よろず相談」も実施しました。
佐井 「大経大の歩き方」は、学部学科別に、学習サポートシステム「KVC」など各ツールの機能や使い方、履修に関する注意点といった情報を上級生の視点から伝えるプログラムです。新入生を7~8人の班に分けてプログラムを実施し、班の中にはDOGsメンバーや、当日のみお手伝いしてくれる学生サポーターが入ってサポートします。初対面の新入生同士が打ち解けるきっかけづくりのため、導入部にはアイスブレイクとして自己紹介ゲームを取り入れました。また、班のメンバーと一緒に実際に操作しながら説明内容を確認することで、新入生が交流しながら必要な情報をしっかりと理解できるように工夫しました。
牧野 私が担当した「新入生交流会」の目的は、新入生の友だちづくりをサポートすることと、キャンパスを知ってもらうこと。本学に関するクイズを解き、キャンパスを巡ってキーワードを見つけ、本学のキャラクター「はてにゃん。」に関わる謎を解き明かしていくゲームを考えました。楽しみながら新入生同士が交流できるプログラムです。ゲームには学長にも動画で登場していただきました。
起 私は、新入生オリエンテーションを周知するためのチラシ作りやSNSでの告知など広報活動を行い、「大経大の歩き方」の自己紹介ゲーム企画を担当する班のメンターも務めました。準備期間中に一番苦労したのは、班のメンバーの意見をまとめて一つの企画案を作りあげることですね。みんなの意見を尊重したいし、新入生にとって良い企画にしなければならないとか、いろいろ考えるとなかなか決まらなくて。時間は無限にあるわけじゃないから、どうしたらいいのか悩みました。
牧野 それぞれ考え方が違うから意見がぶつかることもあって、大勢の意見をまとめるのは本当に大変。大切にしていたのは、できるだけみんなの意見を聞くことです。話を聞いていると、思いがけず良いアイデアが出てくることがあるんですよ。
佐井 確かに!意見交換する中で違う視点を得られることってありますよね。下級生のメンバーと話していると、上級生が当たり前にわかっている情報も下級生にとってはそうではないと気づかされる場面もありました。新入生に情報を伝える際に、自分を基準にせず、もっと丁寧にわかりやすく説明しないといけないな、と認識を改めて取り組むようになりました。
起 私は時間の許す限り、対面で話をすることを心がけていました。やっぱり対面だと相手の表情がわかり、より良くコミュニケーションできるように感じましたね。
田中(健) 統括という立場としては、みんなからの報告や意見を客観的、かつ全体を見通した視点で判断し、意見を出していました。私たちの活動では、どれが正しいという明確な答えがあるわけではありません。だから意見を出し合って、ベストだと思える答えを探っていきました。
佐井 週1回、役員とメンターが集まって会議を行い、意見交換をしています。時には田中君から、リーダーとしての視点でなかなか厳しい発言もありましたが(笑)。私たちも自分の意見を遠慮なく言えて、ちゃんと議論できる関係性があるのがDOGsの良さです。
田中(美) 人の意見にもしっかりと向き合おうとしているのが彼らのすばらしいところです。規模の大きなイベントを準備する中で大勢の人が関わり、役員である彼らはたくさんの壁にぶつかったでしょう。私の元に相談にくることも多々あり、その大変さが伝わってきましたが、とてもがんばっていましたね。
トラブルにも対応できる力をつけ、やり遂げたイベント
――新入生オリエンテーションを実施してみていかがでしたか?
牧野 当日は、新入生が楽しめているかを何よりも気にかけて動いていました。新入生の表情や様子を見て、うまく周りと交流できていない子がいれば声をかけたり、他の参加者と話せるように働きかけたり。最後に笑顔で帰っていく参加者の姿を見られたのがうれしかったです!
佐井 DOGsメンバー以外にも、新入生をサポートしてくれる学生スタッフがいたので、イベントの場に慣れていない彼らにも目を配って声かけをしつつ、スムーズに楽しく進行するために力を尽くせたと思います。
起 私は海外研修に興味を持つ新入生がいれば、自分の海外研修経験を活かしてアドバイスをしました。同じように話をした昨年度の新入生の一人は、「話を参考にして行動できて、実際に海外研修に参加しました」と後から報告してくれたんですよ。自分の経験を後輩のために役立てられるのは、たくさんの新入生と直接関われる場があるからこそです。
松山 上級生が新入生の相談に対応する「よろず相談」に想定以上の相談者が集まった時も、自分たちの判断で対応策を考え行動できていて頼もしさを感じました。
田中(美) 50人を想定していたところに、300人ぐらいの相談者が来て教室内に人があふれてしまい、少し慌てましたね。
牧野 すぐに空き教室の確保と相談ブースの設置、相談にのるスタッフを増やす手配をして対応しました。
田中(健) 事前に起こり得る状況をシミュレーションしていたから、多少のハプニングにはそれほど困りませんでしたね。しかも、DOGsには頼れるメンバーがいるので、落ち着いて臨機応変に対応できました。自分たちにできることはすべて手を抜かずにやったという自信があるから、今回のイベントに関する自己評価は100点と胸を張って言えます。ただ、やってみて初めてわかることもあり、改善できる点はあると思うので、今回の経験を次年度以降の活動につなげていってほしいです。
新入生に伝わった、他者に寄り添うピア・サポートの精神
――新入生オリエンテーションを通じて、DOGsや自身の成長は感じられましたか。
田中(健) 活動継続を考えると、次代のメンバーを育てることも大切だと意識してやってきました。今は頼れる後輩が増えています。DOGsの未来を見据えてこんな団体にしていきたいという思いがメンバー一人ひとりの中に芽生え、チームとしての力も高まってきていると感じています。
田中(美) 次代のメンバーもしっかりと育ってきていますね。DOGsでは学内の活動だけでなく、他大学との交流や各種研修プログラムにも参加しており、それらの多様な経験の積み重ねで成長できたのでしょう。
起 イベントを終えた後などに、活動時において各自の良かった点と改善点について、各班のメンバー間で相互にフィードバックする「リフレクションシート」を記入しています。これも、メンバーの成長に役立っているのかも。とくに改善点を指摘してもらえる機会は普段あまりないので、自分の強み・弱みを知って次につなげることができます。正直、メンバー間のやる気の差というのはあるのですが、改善点に真剣に向き合ってくれるメンバーがいるからこそ、その差が縮まり、チームとして成長できているのだと思います。
佐井 私の改善点は、自他共に認める大雑把さ(笑) 以前のリフレクションで「指示が雑」との指摘を受けていたので、今回は的確に細かな指示ができるよう、自分の行動を見直しました。いちメンバーだった昨年に比べて、副代表としてもどうあるべきか、しっかりと考えて取り組めたのではないかと思っています。
牧野 自分が成長したと感じたのは、リーダーシップ力を発揮できたところ。これまで経験したことのない規模のイベントにおいて、一つのプログラムのリーダーとして取り組む中で、メンバーそれぞれを尊重しながらチームをまとめていく力が伸びたと感じています。
田中(健) 今まで、真剣になると後輩から「怖い」と言われることもあって(笑)、自分が正しいと思う意見を押しつけないように意識しました。もしその意見が正しいとしても、それをすべて通すことが組織として良いあり方ではないと思っており、全体のパフォーマンスを上げることも重視して、最後までやり遂げることができました。代表としてリーダーシップを発揮しなければならない部分と、みんなの意見をしっかりと聞く部分とのバランスをうまくとりながら取り組めたのではないかと思います。
松山 DOGsが主導する新入生オリエンテーションは、本学に欠かせないプログラムになりましたね。上級生にとっては成長の場であるし、新入生にとっても準備と友人作りができる良いイベントになっています。上級生が自分の経験を踏まえて情報を伝え、丁寧に寄り添ってサポートすることで、新入生には安心感が与えられます。これは職員の立場ではなかなかできないこと。また、ただ情報を伝えるだけではなく、新入生同士が交流できる内容にまで作り上げてくれたので、在学生主体のプログラムへと変革して良かったと改めて実感しました。
田中(美) 今回のイベントがどれだけ新入生にとって良いプログラムであったのかは、今年度のDOGsメンバー募集時の大幅な志望者増に現れています。160名を超える志望者は、昨年度と比べると倍増。面接などで新メンバーの人数を絞らざるを得なかったほど。
牧野 志望動機の約8割は、新入生オリエンテーションに参加し、自分もDOGsのメンバーのようになりたいと思ったというものでした。
起 私も先輩に憧れて今まで助けられてきて、次は自分が新入生に寄り添いたいという気持ちで活動していたら、新入生にその気持ちが伝わったのですね。優しさや人を思いやる気持ちがどんどん増えていくようで、うれしく思います。
田中(健) ニーズが変われば活動内容も変えていく必要があるし、今後の方向性は次代のDOGsメンバーが考えてくれればいいと思っています。ホスピタリティとピア・サポート精神、という基本精神さえ忘れなければ、自由に活動していってほしいと後輩たちにエールを送ります!
田中(美) 学生が学生を支援する大学として拡まれば、高校生はもちろん保護者にも安心感を持ってもらえるでしょう。今秋には、全国大学ピアサポーター合同研修会「ぴあのわ」(全国の大学でピア・サポートに従事する学生と、それをサポートする教職員の合同研修会)で本学が幹事校となっており、その準備や研修を通じて、さらに飛躍できればと考えています。今後ますます学生主体の団体として自走できる組織となり、大経大といえばDOGsと言われるまでになってほしいと期待しています。
Hints for SOUHATSU
創発につながるヒント
規模の大きな初めてのイベントを、学生を信頼して任せてみる。それが教育ビジョン「自ら学びをデザインできる学生を生み出す」につながっていると感じました。「本当は自分で動きたいタイプだが、見守った」とも松山さんは語っていました。
DOGsのメンバーは、新入生に寄り添うという目的や仲間の意見との狭間で葛藤しつつもイベントをやり遂げました。乗り越えられたのは、リフレクションシートなどを通じ、正直に議論し合える信頼関係が盤石であったからのように感じます。精一杯の力を尽くしていたメンバーの姿は、きっと新入生に輝いて見えたのでしょう。新入生の中で自然とわき上がった、自らも後輩たちのために行動したいという思いは、創発の新たな芽生えです。ホスピタリティ、ピア・サポート精神をキャンパスの中で広げていく、DOGsのこれからの活動が楽しみです。
▼ オープンキャンパススタッフとしての活動についてはこちら
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