インタビュー

よりよい研究支援を実現するために仕組みを変えていきたい。(研究支援・社会連携部長 岩垣信子さん)

ビジョンの実現に向けて取り組みを進めている職員へのインタビューです。各ビジョンを推進するためのヒントを紹介します。

※肩書はインタビュー当時のものです。

研究ビジョン

知の“結接点”となる

分野や産学官民を問わず、国内外の多彩な知を集積し、それぞれをつなげる場を形成する 
ことで、新たな価値を創出していきます。

社会実践ビジョン

商都大阪の原動力となる

学内のリソースを一本化し、中小企業や経済団体、自治体といった学外機関をつなぐハブ機能と、
地域課題の解決を担うプラットフォーム機能を強化します。

厳しく見える研究費管理にも意味が

研究支援・社会連携部には、研究支援課と図書館・研究所・社会連携課があり、図書館・研究所・社会連携課には、日本経済史研究所と中小企業・経営研究所という2つの研究所、図書館、中小企業診断士養成事務室、社会連携部門があります。
私自身は2024年5月まで研究支援課長を兼務しており、主に研究支援を10年近く担当してきました。研究支援課では、研究者に対する研究活動の支援、研究費の不正使用を防ぐための研究コンプライアンスの体制構築、『大阪経大論集』や研究叢書等の発行、学生奨学論文やゼミナール優秀卒業論文賞の募集などを行っています。

『大阪経大論集』や研究叢書

現在、研究者に対する研究活動の支援で中心になっているのは、文部科学省の科研費(科学研究費助成事業)を含め、研究費の管理・執行に関する業務です。研究支援課では、文部科学省のガイドラインに基づいて本学の規程を定め、研究コンプライアンス体制の整備を進めてきました。そして、それらに基づいて研究費の管理・執行を行っています。

なかには、大学のルールや研究費の使途チェックが厳しいと感じている先生方もいらっしゃるかもしれません。しかし、大学の体制が間違いないと認められなければ、特に科研費については、大学への間接経費が交付されなかったり、最終的には、研究費の配分自体が停止されるという事態もあり得るのです。厳しさは先生方を守るためでもあるということを理解していただけるよう、私たちももっと努力をしなければと考えています。

本来の意味での研究支援を進めたい

最近は、学部の収容定員増や国際共創学部の開設によって教員の人数が増えたこともあり、どうしても研究費の管理・執行などの事務作業に追われがちでした。2021年度に採用になった外部研究費担当のスタッフを中心に研究計画調書の書き方についての勉強会や個別相談、関連図書の貸し出し、先生の許可を得た上で、過去に採択された調書の閲覧を可とするなど、細々とした支援は行っていたとはいえ、本来の研究支援活動がまだまだできていなかったといえます。2024年5月からスタッフが1人増え、研究支援に注力できる体制が整いつつありますので、今後は本格的に支援を進めていきたいと考えています。

そのひとつは、外部助成金への申請を増やすことです。科研費の採択率は全国平均で28%前後ですが、本学は30%を超えており、50%を超える年もありました。ですが、申請数そのものは30件弱に留まっています。今後はこの申請数も増やしたい。より多くの先生方が研究に力を入れられるよう、申請・採択に向けたサポートをしたいと考えています。

ただ、科研費の対象は分野を選ばない反面、アカデミックな側面が強く、なかにはご自身の研究内容と合わない先生もいらっしゃるかもしれません。そうした先生方には、民間財団・企業の助成金、国・自治体の公募なども検討いただければと考えています。そこで、大学が入手した助成金情報をメールで回覧するだけでなく、産官学連携の視点からももっとピンポイントで案内を届けたり、学外との連携に興味はあるけれど、進め方に迷われている先生方の背中を押したりできる方法を探したいと考えています。

今年は、研究支援課のあり方が変わるタイミング

本学では、2024年度からはじまった新第二次中期計画において、研究ビジョンの主要施策に「分野横断的な研究の推進」などを掲げています。もともと本学は個人で活動されている先生が多いため、まずはどのように分野横断的なグループをつくるかを考えたいと思っています。先生方の研究内容を調べて研究支援課でマッチングするのか、先生方の交流のなかでグループが生まれるようにするのか、アプローチの方法を模索中です。

研究支援に関する他大学の事例なども参考にしているという岩垣さん

いずれにしても本当なら先生方が交流できるサロンのような場所があればベストなのですが、場所をつくるには時間がかかるので、まずはソフト面からはじめます。例えば、定期的にニュースレターを作成して助成金情報を案内したり、ホームページで研究関連の情報を発信するなどです。そうして関心のある方のリアクションを見ながら次の方向性を探り、人と人をつなぐ提案ができるカタチにしていきたいと考えています。新しく国際共創学部が加わったことで何かおもしろいことができそうな予感もしています。

また、今は、大学としての情報発信が求められる時代です。科研費でも研究成果のオープンアクセス化が推進され、論文だけでなく、研究データの公開も必要となっています。本学ホームページには機関リポジトリがあるものの、掲載しているのは大経大論集や博士論文・修士論文(要旨)のみというのが実情です。2024年度中には公開ポリシーを策定し、先生方の論文や研究成果を集約して、機関リポジトリの充実を図れるよう目途を立てたいと考えています。

先生方が研究成果を出し、業績を重ねてステップアップできるようサポートすることは、私たち研究支援課の大切な仕事です。さまざまな事情からしばらく足踏みをしておられた先生が、再び何かに挑戦されたり、成果を出されたりして走り始める姿をみるのは大きな喜びでもあります。積み重ねてきたことは、いつか形になる。誠実に向き合い続けることが大事なんだと教えていただいていると感じます。

これまで以上に研究支援課を役立てていただくためには、お互いにリスペクトして信頼関係を築き、先生方にも私たちにも、よりよい仕組み・環境を整えていく必要があります。私たちがめざすのは、先生方に伴走する存在であること。研究支援課のあり方や業務内容は、今年、大きく変わるタイミングだと感じています。