インタビュー

自発的な成長や創発を促すために、実社会とつながる機会を増やし続けたい。(図書館・研究所・社会連携課長 大塚好晴さん)

ビジョンの実現に向けて取り組みを進めている職員へのインタビューです。ビジョンを推進していくための職務内容や、2032年に向けての抱負を語っていただきました。

※肩書はインタビュー当時のものです。

社会実践ビジョン

商都大阪の原動力となる

学内のリソースを一本化し、中小企業や経済団体、自治体といった学外機関をつなぐハブ機能と、
地域課題の解決を担うプラットフォーム機能を強化します。

自治体や企業との連携強化を図る

以前は総務部や社会人大学院で勤務していましたが、2018年から研究支援・社会連携部の図書館・研究所・社会連携課に移りました。同課には日本経済史研究所、中小企業・経営研究所、図書館、社会連携、中小企業診断士登録養成課程の5つの部門があり、私は社会連携、中小企業診断士登録養成課程を主に担当しています。

社会連携部門では、自治体や企業の協力のもと、教員を交えながら地域社会との連携強化や学生が学ぶ機会の創出に努めています。本学のある東淀川区をはじめ、和歌山県白浜町、大阪府交野市、高知県黒潮町とは連携協定を締結しており、ゼミやPBLでフィールドワークをはじめとした活動を実施しています。今年度は、白浜町から町役場の職員採用についての課題を伺い、学生が解決するための企画やアイデアを練り、役場のよさを広く伝えるための取り組みを進めているところです。

また、協定のかたちをとっていない自治体とも連携があり、大阪府能勢町や兵庫県豊岡市では、学生が地域の人たちと一緒になって夏祭りの運営などに携わっています。企業との連携では、今年度、釣り具メーカーの株式会社ハヤブサの依頼を受け、廃校を活用した釣りを楽しむ施設の集客のためPR企画を立案するプロジェクトを行う予定です。

中小企業診断士登録養成課程は2019年に開講しました。仕事を続けながら学べる1年制のコースで、定員は24名となっています。今までに119名が修了して資格を取得しました。本課程の特徴は、座学に加えて実習があること。実際に1人あたり年間5社の中小企業を訪問し、経営者や従業員へのヒアリングや課題抽出を行い、経営改善策などを提案します。中小企業診断士の資格は筆記試験でも取得できますが、本課程を修了すれば実習による実践力の向上と、共に学んだ仲間を得て資格取得ができるのです。そのため、出願倍率3.25倍という人気の課程になっています。

中小企業診断士をめざす人は、すでに何らかの資格を持っていたり、豊富な社会経験を持つ方が多く、実習でも非常によい提案をされます。そのため、なかには実習終了後も継続して支援してほしいという企業があり、資格取得してから実習先の企業の支援を継続する修了生もいるほど。中小企業診断士登録養成課程は、人の育成が中小企業の支援にもつながるので、本学ならではの価値の高い教育課程だと思います。

さまざまな人や場が接することで創発が生まれる

本学では「創発」をキーワードに掲げていますが、私の考える創発とは、人でも場所でも、あらゆるものが接することによって思ってもみなかったアイデアが生じることです。私自身は、仕事を通じて自治体や企業と本学の接点を増やしていくことが創発につながると考えています。

企業と学生の接する機会の1つに一般社団法人大阪府経営合理化協会や本学などが主催する「学生に知ってほしい働きがいのある企業大賞」があります。2023年の第6回から本学学生も審査員として参加することになりました。学生は投票するだけでなく、上位に入った企業の経営者にインタビューも行います。中小企業は全国に約350万社あり、学生にはあまり知られていないけれど働きがいのある優れた企業がたくさんあるので、そうした企業と学生が出会うきっかけの場となっています。社員が自信をもって「仕事への熱意を感じられる職場だ」と回答する姿に心を動かされたとか、働きがいの定義が変化したという学生もいました。

また、連携事業への参加をきっかけに、思ってもみなかったキャリアに進んだ学生がいます。2年前、白浜町のふるさと納税返礼品PRイベントを企画するため、学生たちは白浜町役場のふるさと納税担当職員へのヒアリングや白浜町の企業訪問を行っていたのですが、一人の学生が役場の仕事に関心を持つようになり公務員試験に挑戦。今年の4月から白浜町役場で職員として働いています。

白浜町のふるさと納税返礼品PRイベントの様子

中小企業診断士登録養成課程の修了生も学生の創発に一役買っています。学生向け講座で、ITや経営戦略、人事など、それぞれの得意分野をどう活かして仕事をしているかを話してもらうのです。学生にとってみれば、知識やスキルを学べるのに加えて、自身の強みを活かしながら仕事をするとはどういうことなのかを知ることができ、刺激になります。

2032年に向け、人間の根本を育てられる大学へ

私が担当している社会連携部門と中小企業診断士登録養成課程は、どちらも連携先や実習先を開拓することが重要です。中小企業診断士登録養成課程では年間15社の実習先が必要なので、開講した2019年からこれまでに90社、お断りされたところも含めれば100社以上にのぼる企業を訪問して協力を依頼してきたことになります。社会連携部門の仕事は、事務職というよりは営業職の色合いが濃いかもしれませんが、本学の社会実践ビジョンにある中小企業支援のハブとしての役割であったり、地域社会の核となる場の形成に貢献できるので、とてもやりがいがあると感じています。

大学では、教育に関して直に職員が関わっていける場面はそれほど多くありません。しかし、社会連携や中小企業診断士登録養成課程の仕事は、教員も職員も外部の中小企業や専門家の方も一緒になって、よりよいカリキュラムや環境づくりに取り組めるのが魅力です。こうした教職協動や外部との連携によって、私たち職員も創発の機会を得られることがあります。実際に経営者の方とお話しするとそのエネルギーに圧倒され、気づかされることも多く、職員一人ひとりが自分をリーダーだと思って行動することも大切だと思うようになりました。

「社会や地域と関わりながら成長する学生の姿に喜びを感じる」と大塚さん

本学は2032年に創立100周年を迎えます。そのとき、どんな社会になっているかは正直、わかりません。建学の精神やビジョン「自ら学びをデザインできる学生を生み出す」など変えてはいけないものは継承しつつ、社会の変化にあわせて柔軟に対応していく必要があります。

「自ら学びをデザインできる学生を生み出す」とは、一人ひとりが将来なりたい人物像に向けて、足りない部分を自ら認識し行動できるように育てることだと思います。周りに流されずに自分で考えて行動するのは簡単なことではありません。でも、どうなるかわからない時代だからこそ、自分としての芯を持つことは学生にとって大きな強みになるのではないでしょうか。私は、本学を選んでもらう時に、「経済や経営を学びたいから」ということだけでなく、「人間としてのコアな部分が伸びる環境にいたいから」と思ってもらえる大学になればと考えています。

Hints for SOUHATSU

創発につながるヒント

社会連携プロジェクトなどによって学生に創発の場を提供することは職員の大切な役割であり、それによって学生の成長を感じられるのは喜びでもあります。しかし、自らの創発となると、「職員の立場では難しい」と感じている人もいることでしょう。今回のインタビューから、自治体や企業など外部との連携はもちろん、教員と職員が協力して取り組む教職協動に何らかのヒントがあると改めて気づかされました。普段の仕事では関わらない人と話したりするだけでも、いつもとは違った見方ができたり意外な発見に出会えるのかもしれません。

理解・納得した