創発レポート

本学が培ってきた文化、ビジョン実現に向けてできることを対話する。|Talk with ALL #02

インナーブランディングの取り組みを続ける中で、ミッションやビジョンを自分の行動にどう落とし込んでいくのかのイメージが持てていない人が多いことが明らかになりました。この課題の解決をめざして、さまざまなワークショップを実施しました。今回ご紹介するのは「Talk with ALL」です。少人数のグループで、「エンゲージメントカード」というツールを使いながら対話する中で、これまで自分たちが培ってきた「無形資産」を改めて認識し、自分たちだからできるミッション実践の方法を考えるワークショップです。


エンゲージメントカードとは

価値観を表す言葉とイラストが書かれた89枚のカードから、設定したテーマに合うカードを選択し、なぜそのカードを選んだのかについて語り合いながら、自分や相手への理解を深め、違う考え方に対する受け止め方の変化を促します。対話を通じたイメージの共有や、価値観が違う人同士の対話の中で新しいものを創造するなど、チームビルディングにつながる活動に使われているツールです。


開催日:2021年11月25日
参加者:14名

第1回に続き、山本俊一郎学長による「Vision Talk」をはさんで2つのワークに取り組む構成で行われました。事前に研修を受けた教職員がファシリテーターとなり、前半はグループで「大阪経済大学が培ってきた文化」をテーマに7枚のカードを、後半はメンバーそれぞれが、「ビジョン実現のために7枚に加える1枚」を選び、その結果を全員で共有しました。

本レポートでは、グループで選んだ7枚のカードの内容と説明、メンバーそれぞれがビジョン実現のために選んだ1枚についてお伝えします。自分のワークを振り返るとともに、参加回以外ではどんな対話が行われたのか、ぜひ追体験してみてください。

グループA

大経大には堅実、質実剛健など硬いイメージがある、というのが4人の共通認識でした。それに基づいて選んだ7枚です。「一貫性」は、経済大学として90年にわたりスタイルを確立してきたことから。「支援」「コミュニケーション」は、学生に対する支援の手厚さ、教職員と学生との距離の近さからです。「誠実さ」は全員一致で、真っ先に決まりました。「愛」は、学生に愛を持って接していることから。「協力」は、教職員と学生がともにつくりあげてきた大きなイベントがたくさんあり、教職員間にも協力し合える風土があるからです。「自由」は建学の精神でもありますが、教職員と学生との近さから、学生に様々な提案ができ、学生の意見を吸い上げて形にできる自由があるという意味でもあります。教職員がリードして学内外と広くつないでいくことで、学生にとって自由に思ったことができる環境が実現できているのではないでしょうか。

ビジョン実現のために加える1枚(発表順に記載)

松田 力さん(職員・経営企画部)が選んだ+1

躍動的な(ワクワクする)人生

EXCITING LIFE

学長のVision Talkにも出てきた「ワクワク」という言葉に魅かれています。学生も教職員もワクワクできるようなことが実現していけたらいいですよね。小さくてもいいから成功体験を一つひとつ積み上げていくことが、2032年に向けてのステップだと感じています。

下浦 智也さん(職員・学生部)が選んだ+1

遊び心

PLAYFUL MIND

「Talk with」の座談会に参加した時、出席している皆さんから、遊び心のあるアイデアがたくさん出ました。ただ、今までの大経大にはそれを実践できる場がなかった。誠実で硬い大経大に遊び心を加えることで、どう変わるのかにすごく興味があります。

藤本 髙志さん(教員・経済学部)が選んだ+1

好奇心

CURIOSITY

経済とは、ご存じの通り経世済民の略です。人口減少、高齢化、貧富の格差拡大、コロナ、社会保障、気候問題と、これからの世代は課題だらけの世の中で生きていかなければなりません。学生には社会問題に好奇心を持ってほしいし、好奇心がなければ創発もないと思います。

前田 貴史さん(職員・監査室)が選んだ+1

心が広い・寛容さ

OPEN MIND

最初は、「おもしろい」を選びました。でも、面白さを感じるためには、まず様々なところに飛び込んでいけるような環境づくりが必要で「失敗してもかまわない、次に行こう」というぐらいの心の広さ、寛容さが重要なのではないかと思い、変更しました。寛容さが安心感を生み、挑戦につながるのだと思います。

グループB

大学が培ってきた文化として、安定志向というのがあるのではないかと思います。他グループも似たカードを選んでいます。「個性」はそれと逆行するようですが、個性がないという個性によって、90年間「自立」した運営を継続してきたとも言えます。「支援」は、学修・生活・就労と学生に対する支援を手厚く行ってきたから。「慎重」は、慎重に行動を選択する学生や教職員が多いことから選びました。「平等・公平性」は、教員も職員も、役職の垣根を越えて意見交換がしやすい文化があるからです。「誠実さ」は、誠実な学生が多いということですが、学生支援を通じてそのような学生を育成している結果かもしれません。本学の文化を最も言い得ているのが、最後の「平穏な人生」。大掛かりで派手な選択肢よりも、平穏に近い選択肢を選ぶことが多い大学だという意見が出ました。これが、冒頭の「個性がないという個性」という良い意味での本学の文化につながっているのかもしれません。

ビジョン実現のために加える1枚(発表順に記載)

髙井 逸史さん(教員・人間科学部)が選んだ+1

フォロワーシップ

FOLLOWERSHIP

ビジョンに対し、みんなが一丸となってフォローしていくスピリットをしっかり培っていかないと、目標を掲げても実行が伴わないということになりかねません。教職員が一緒になって、手と手をつないでやっていくという気持ちで選びました。

伊藤 正之さん(教員・経営学部)が選んだ+1

志・野心

AMBITION

特に野心ですね。本学には、自分から前に出る学生がそんなに多くありません。海外へ留学しようという学生も少ない。これからの大阪に貢献できる人材を育てるというミッションの実現には、まずは、とんがった人材を生み出すことが大切ではないかと考えています。

大塚 好晴さん(職員・教育・研究支援・社会連携部)が選んだ+1

人間関係

HUMAN RELATIONSHIPS

ミッションには創発というキーワードがありますが、創発は、人と人とがつながらないと起きません。学生同士、学生と教職員は現状でもつながりはありますが、今以上に人と人とのつながり、人間関係を意識し、行動していくことで、おのずと創発が起きると思います。

樽野 雅史さん(職員・経営企画部)が選んだ+1

躍動的な(ワクワクする)人生

EXCITING LIFE

本学の今までが、平穏な行動や選択を重視してきたのであれば、それに加えて対極にある行動や選択をする人にも寛容であることが大事だと思います。チャレンジをする人を認め、ワクワクする文化が生まれ、従来の平穏な文化と共存しているような大学になればいいですね。

畑野 辰幸さん(職員・財務部))が選んだ+1

コミュニケーション

COMMUNICATION

ビジョンに向けて進んでいくにあたっては、様々な障害に突き当たることもあるでしょう。そんな時でも、教職員同士や、教職員と学生とが円滑なコミュニケーションを取り合えるような組織をつくることで、問題に立ち向かうことができると考えて選びました。

グループC

「誠実さ」は、何かを申請する時や、学生に対する姿勢などから選びました。「支援」は、ゼミなど学習に関して支援の制度が整っていると思うからですが、一方で、励まし実力を高めるような支援についても、もっと全体的にやっていけたらいいという意見が出ました。「慎重」は、他学が成功したところを固めていく方法で成長してきたことから。「コミュニケーション」は、学生と教員の距離が近いからで、「自由」は、わりと「やってはだめ」という部分がない組織だからです。「富・財産」は無借金経営と、財務状況が良好だった点を評価しました。ということで、経営についても運営方針についても、慎重で「安定」を重んじるところが、今まで培ってきたものだという考えにまとまりました。

ビジョン実現のために加える1枚(発表順に記載)

高濵 悠紀さん(職員・経営企画部)が選んだ+1

おもしろい

INTERESTING

私自身、面白いということが、何よりも行動へのモチベーションになっています。まずは自分がワクワクできるか、そして仕事をとおして誰かと共にワクワクできるかが、ビジョン達成に向けての私の行動指針になるのかなと考えました。

寺村 元輝さん(職員・財務部)が選んだ+1

計画

PLAN

大学は企業と違い、リソースを増やすことがほぼ望めない財務体質になっています。大事業を成し遂げるなら、人的・金銭的リソースをどう配置するかしっかり計画を立てることが必要。それを教職員一人ひとりが理解していないと一体となった改革は難しいと思います。

辻 大輔さん(職員・学生部)が選んだ+1

承認

ACKNOWLEDGEMENT

今後、個々が挑戦していけるようにするためには、アイデアに対して「いいね」とまずは受け入れ、認めてあげることが大切ではないかと思います。何でもOKではいけませんが、そこから創発が始まり、本学がより発展していくのだと思います。

白 寅秀さん(教員・経営学部)が選んだ+1

自立

INDEPENDENCE

大学の第一の使命は、世の中に貢献できる若い人を、支援して、つくりだすことだと思います。社会に出たら、一人の人間として自立できることが大事です。在学中に、自分の好きなことや見方・個性を身につけた人になってほしいと考えて選びました。

岩佐 托朗さん(教員・情報社会学部)が選んだ+1

友情・仲間

FRIENDSHIP

学生と教職員の間の距離も近く、すでに友情・仲間は十分にできていると思います。今日のワークショップでは、初めてお会いした方もいらっしゃいました。このような機会をどんどん増やし、より親近感のある結束力の強い大学になれたらいいと思います。

まとめ

初回に続き、和やかではありながらも白熱した議論が展開されました。ワークの冒頭、グループ内で、自分のカードを1枚選んで自己紹介をしてもらうのですが、今回は、その内容についても皆さんの前で発表していただきました。参加者の考えや関心の持ち方などについて、その一端を垣間見ることができ、同じワークショップに参加した人同士の理解が深まり、新たな発見にもつながりました。

参加者のコメント

寺村 元輝さん

大経大について考えるのだから同じような結果になると思っていましたが、自分のチームではほとんど考慮しなかったものが他チームで選ばれており、その理由も興味深く聞きました。自分のカードを選ぶことで、自分の価値観を掘り起こすような体験ができました。

岩佐 托朗さん

想像以上に面白かったですね。それぞれが大学に持っている意見が違うことがわかり、カード1枚なのに、その人のプライベートなこと、ときには人生観のようなものまで含めてうかがうことができました。司馬遼太郎さんの「人間にとって、人間ほど刺激的なものはない」という言葉が私は大好きなのですが、人と人とが出会い、意見をぶつけ合って、創発する場に、大経大がなっていければいいですね。

白 寅秀さん

このようなランダムな形での交流ができ、私にとってはとても楽しい経験でした。着任したばかりなので、長年勤めておられる方の考えを聞くチャンスがあったのもよかったと思います。職務、経歴、専門が違う方々同士でこのような議論の場があれば、さらにいろんな成果が得られるでしょう。ここで交わされた言葉や声を拾い上げることが、大学がこれからめざすものの実現に役に立つと思います。