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TOP REPORT学長が探る、大経大の創発

2022/09/21 UP

地域のために大経大だからできることを追いかける。「福学地域連携プロジェクト」(後編)

浅田拓史ゼミ

情報社会学部 情報社会学科

対談イメージ

福祉事業所との連携で、幼稚園の入園準備用品のオーダーサービスを実施

情報社会学部・浅田拓史准教授と浅田ゼミの学生が取り組んでいる「福学地域連携プロジェクト」は、「障がい者福祉」と「大学」のパートナーシップをめざすユニークな活動です。学内はもちろん学外の様々な方々とつながりながら、レンジの広い活動に進展していく可能性を秘めたプロジェクト。浅田准教授をはじめプロジェクトに関わる方々をお招きして、山本俊一郎学長がお話をうかがいました。その内容を前後編に分けてお伝えします。活動がスタートした経緯と代表的な取り組み「くすのきエール・マルシェ」をテーマにした前編に続き、後編では、「ビジネス・マッチング・プラットフォーム」への活動の広がりをお聞きするとともに、大阪経済大学らしい創発のあり方についても皆さんに考えていただきました。

情報社会学部

  • 浅田拓史さん

    情報社会学部准教授。専門は管理会計。創造性を高めイノベーションにつながるような組織管理のあり方に関心を持っている。

  • 内橋洋喜さん

    情報社会学部情報社会学科情報コミュニケーションコース4年生。浅田ゼミを引っ張る頼りになるリーダー。

  • 若岡聡子さん

    中小企業診断士。本学の中小企業診断士登録養成課程修了生。本プロジェクトにアドバイザーとして参加。

  • 木村優介さん

    大阪市東淀川区にある就労継続支援B型事業所「ミシン工房 道の空」を運営する株式会社道代表代理。「福祉事業所としての新たな取り組み」と本プロジェクトに期待を寄せる。

福祉事業所と地域のニーズを結びつける

学長 浅田先生たちは、販売する場を広げる「くすのきエール・マルシェ」とはまた違った方向の取り組みも進めていますよね。福祉事業所と地域住民や中小企業のニーズを結びつける「ビジネス・マッチング・プラットフォーム」について、お聞かせください。

浅田 福祉事業所では工賃が上がらないことが課題です。道の空さんのような就労継続支援B型事業所の工賃は、令和2年度の全国平均で時給222円ですが、これがマルシェ開催によって400円や500円に上げられるわけではありません。もっと売り上げに貢献するには、大学がビジネスプラットフォームになって、事業所が持つ技術と地域のニーズとを結び合わせることが必要だと考えていました。私自身は、かなり長期的な計画のつもりで若岡さんにそんな話をしていたのですが、若岡さんから「それならアイデアがありますが、やりますか」とすぐ提案が返ってきたんです(笑)。それが、道の空さんの縫製技術を、新入園児を持つ保護者のニーズと結び付けた「入園準備用品オーダーサービス」でした。

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大学がハブとなるビジネスプラットフォームの構想を語る浅田先生

若岡 道の空さんの商品を見せていただいたときに、申し訳ないのですが、お客さんの顔が見えないと感じました。誰に向けた商品かが伝わりにくいことが、すごくもったいないと思ったのです。そこで、保護者が用意した布地を預かり、入園に必要な着替え袋や上靴袋など入園準備用品の製作を道の空さんが請け負う、というビジネスプランを考えました。入園準備用品を思いついたのは、私自身が子どもの入園準備をするのにすごく苦労した経験があったから。裁縫が得意ではなかったり、時間の取れない保護者にとっては、必ず助けになると思いました。ただ、問題は準備期間でした。浅田先生の話を聞いたのが10月下旬で入園説明会はもう終わっており、ギリギリ間に合うかどうかというタイミングでした。短期間でヒットさせるには不安があるなと迷っていたら、浅田先生に「やることに意味がある」とおっしゃっていただき進めることになりました。

浅田 ビジネスでは結果が出せないことは失敗ですが、研究者は成果が出ないことに慣れているので(笑)。何十時間も調査したのに、様々な事情で論文にできなかったりすることは普通にありますからね。

学長 業界の違う人同士のコラボの面白いところかもしれませんね。

若岡 一番の課題は「幼稚園が乗ってくれるのか」というところでした。普通のビジネスの感覚だと断られるなと思いました。そこで、大学から役所に掛け合ってもらい、役所からつないでもらうというプランも考えたのですが、結局、直接営業活動をすることになりました。しかし、いざ始めてみると幼稚園の方がとても協力的に対応してくださり、心配は杞憂に終わりました。

浅田 大学が持つソーシャルキャピタル、つまり地域における信頼とかネットワークとかがいかに厚みのあるものか、ということを改めて感じさせられました。今回、ご協力いただくことになった認定こども園小松幼稚園さんは、以前から本学の先生とのお付き合いもあって私たちを信頼していただけました。また、地域連携をしたいと考えているのにそのネタが尽きてきているというお悩みがあり、その意味でも歓迎されたのです。ただ時期的なことがネックになって、園長先生からあらかじめ「注文はゼロかもしれない」と言われていたのですが、8件の注文をいただきました。

木村 このお仕事は、作り手である利用者さんがすごく喜んでくれたんですよね。オーダーメイドなので、使ってくれるお子さんのことを思い浮かべてつくれる、それがとてもうれしいと話してくれています。

内橋 利用者さんたちは、「注文し、使ってくれてありがとう」というお手紙を書いて商品に添えるほど喜んでくれていました。その姿を見ていて、作り手にとって使う人が見えるとやる気が出るということに気づかされました。

浅田 時間がなかったこともあり、学生には、内橋くんに説明動画をつくってもらったのと、できた商品を幼稚園に行ってお渡しするお渡し会に参加してもらったぐらいなのですが、今後は、入園説明会で申し込みを受け付けるので、その時に参加してもらえたらと思っています。

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利用者さんがつくった入園準備用品を受け取る子供と保護者

学長 この取り組みは、今後はどのように発展していくのでしょうか。

木村 資料づくりを含めた営業活動や打ち合わせなどを含めて、今後は私が主体となって活動を進めていきます。何かあれば、若岡さんたちにその都度アドバイスいただけるので心強く思っています。今年はもう1件、新たにお取引いただける園が増えましたし、この調子で区内の幼稚園や保育園に広げていけたらと思っています。この事業が軌道に乗れば、地域の課題解決につながり、工賃向上計画に大きな弾みがつくのではないかと期待しています。

浅田 ビジネス・マッチング・プラットフォームは、事業所さんが自走していくまでをお手伝いすることが目的なんですね。今回、地域の方々と接してみて、大学には地域社会からの高い信頼があること、また同時に連携するには敷居が高いイメージがあることもわかりました。こうした気付きを、また新たな取り組みに生かしていければと思います。

学長 では、「福学地域連携プロジェクト」として、今後のビジョンについても教えてください。

浅田 福祉事業所と大学の連携を長期的に継続させるためには、お互いにメリットのある取り組みが大切だと思っています。たとえば、6月からある事業所さんにキャンパスでパンを販売してもらっています。販売機会を提供するだけでなく、パッケージの提案や商品の改善提案などを学生にさせてもらったり、販売のデータから売上高倍増をテーマに学生に研究させてもらっています。このような互いにメリットのある関係を構築することが、長続きする秘けつだと思います。もう一つのポイントは、いろいろな人に関わってもらうことです。今回も、若岡さんや南さん、また職員の方々と、それぞれの得意分野を生かしてたくさんの人に協力してもらうことで学生の学びはより充実していきました。今後も、こうした開かれたプロジェクトでありたいと思っています。

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それぞれの視点から、「福学地域連携プロジェクト」を振り返る

「僕にももっとできることがある」と思える瞬間を創出

学長 それでは、プロジェクトを経験してきた皆さんと、大阪経済大学らしい創発について考えていきたいと思います。まず、創発を生み出す人を育てるには何が必要だと考えますか。

浅田 今の話とつながってしまいますが、ゼミも一人で教えるのではなく、違う形があってもいいのではないかと感じています。外部の方などにご指導をいただけるような環境は大事ではないでしょうか。

内橋 創発ということと関係があるのかわかりませんが、僕自身は、浅田先生はもちろん、若岡さんや南さんから様々な知識を学び、アイデアのヒントをいただきながら自分たちで考えることで、知識と実践がつながった気がします。新しいことをしているなとか、もっとできることがあるかもしれない、と思う瞬間がたくさんありました。それから、自分でやらないといけないと思い込んでいたところがあったんですが、周囲と役割を分担してみんなが経験することが組織にとって大事だということもよくわかりました。

浅田 確かに、多くの学生が成長したのを感じますね。リーダーとして責任を持たされることで、すごくしっかりした学生もいます。いろいろ学んで成長したのだと思います。もともとあった能力が発揮されるには、任される環境が必要だったのでしょう。

若岡 私は、人材の多様性が面白いものを生み出すのではないかと思います。いろいろな人と出会えること、そして相手を理解するまで互いにコミュニケーションできる関係の構築が大事です。

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創発できる関係性づくりの大切さを話す、若岡さん

学長 このプロジェクトには、それぞれの想いやニーズをつながるように変換して伝えられるコンバーターがたくさんいたから成功したという気がします。では、大阪経済大学らしい創発がどんなところから芽生えてくるかについても、ご意見をお聞かせください。

浅田 経済大学であることに徹底的にこだわるしかないのではないでしょうか。経済学とかビジネスの視点から何ができるか、社会問題をどう解決できるのか考えていくというところですね。それから、たとえば利用者さんと会って話したことがある学生は、障がい者といってもいろんな人がいて決して一括りにはできないことを肌で理解しています。彼らなら、障がい者が自分に合った職場を見つけられるような世の中に変えていってくれるのではないでしょうか。あと、先ほどの若岡さんの話で言うと、コミュニケーションが取りやすいことも大経大らしさだと思います。小規模だから教員と学生、職員さんとがつながり合う関係があり、それが効いているというのは確かにあるでしょう。ただ、もっと日常的に学生と教員や学生同士がコミュニケーションを取れるたまり場のようなところが必要なのではないかという気がします。ずっとコミュニケーションをしていないと、「新しい商品どうする?」みたいな話は出てこないですから。

学長 そういうイノベーションが生まれるような環境を、今、少しずつ整備する方向で動いているところです。

対談イメージ

山本学長と内橋さん

対話し理解し合う、その過程が創発を生む

学長 では最後に、創発とは何か、創発の魅力について自分のイメージを広げてみていただけますか。

木村 私は、何かを生み出すだけでなく、そこから枝分かれしてどんどん新しいものが生まれていくイメージを持っています。

内橋 僕の経験が創発だったとするなら、世界が広がったというのが一番近いです。新しいことをやったから発見もいろいろあり、普段の生活の中にも学びの場があることに気づくことができるようになりました。新しい発見を、他からもっと得たいと思うようになったと思います。

浅田 ゼミで感じた実体験がきっかけになって、他の分野にも関心や興味を広げていってほしいですね。人は、楽しいことからしか学べないと思うんです。楽しいことだと、学生が勝手に動き始めるんですよね(笑)。もちろん、楽しいことを提供するのはそれなりに負荷が大きいのですが、育てることに手を抜かず真剣にやらないと、と思います。

学長 創発についてもぜひ、お考えをお聞かせください。

浅田 私のような経営系の人間だと、「創発戦略」という言葉になじみがあります。これは、計画された戦略でなく、ボトムから生まれてきたような戦略を全体的な戦略にしていくというような意味です。そういうことを実現するためには、対話型のコントロールが必要です。現代のような不確実な時代には、経営者もどうしたらいいかわかっていない状況。だからこそ、最前線にいる従業員の話を聞いて対話しつつ、コントロールしていくことが必要だと言われています。創発していくためには、対話が必要なんですね。学長もそうでしょうし、教員と学生の関係で言えば、教員も学生と対話しながら常に学んでいかなければならないなと感じています。

若岡 創発には、今までになかったものが表れるというようなイメージがあります。でも、その表れた結果よりも面白いのはその前段階です。みんなのできることを寄せ集めて、いいものが表れたということでしょう。多様な人たちと話し合い、強みを理解し合う、その過程がとても楽しいですね。

学長 みなさんのお話を聞きながら考えたのは、創発には個の力が大切なので、それを育てていくこともポイントになるということです。多様な人たちの交わりから何かを生み出そうとするなら、交わる人たちに自分の考えをしっかり持ちアウトプットもできる能力が必要です。浅田先生がおっしゃった真剣に学生を育てるということについて、改めて考えさせられました。みなさん、今日は貴重なお話をありがとうございました。

After the dialogue対話を終えて

  • 山本俊一郎さん学長山本俊一郎さん

    創発には様々な形があると思いますが、このプロジェクトがコロナ禍の障壁を乗り越えたブレークスルーの活動だったことに感銘を受けました。学外の事業所と学生が協力して何かを形にし、継続しているところが面白いし、これまでにない取り組みです。経済やビジネスの視点から社会課題を解決するという大阪経済大学らしい創発のシーズとしても、今後の展開に期待しています。

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