インタビュー

大経大の未来は大阪の未来に重なる。新しい豊かさ、価値観をクリエイトする存在に。|Top Message #08

本学のミッションには、「商都大阪から、社会に貢献する“人財”を輩出する」というフレーズがあります。今回は、この意味をもう少し掘り下げて考えてみたいと思います。このフレーズが生まれた背景には、本学が「大阪経済の発展に寄与する人材を育ててほしい」という地元経済界、財界の人々の願いから創立されたという建学のルーツが大きく関係しています。そしてもう一つ。「商都大阪から」という言葉に込められた想いを理解する必要があります。

「商都大阪」は天下の台所から大大阪まで、江戸、明治、大正と、栄華を誇った時代の大阪を現した愛称です。これまで関西経済は繊維、金属、電気機械を中心に日本の工業化を牽引してきました。その誇りが「商都大阪」という言葉に表されています。しかしながら、1980年代以降、経済活動の東京一極集中が進み、関西では、経済の地盤沈下が指摘されるようになりました。東京はニューヨークやロンドンと並ぶ世界都市となり、金融センターがない大阪は同じ階層にはいません。それでもなお、大阪はこれまで東の東京、西の大阪と謳った二眼レフ論に代表されるように東京を強く意識した都市政策を進めてきました。その考えは直近の東京と経済圏を一体化するスーパー・メガリージョン構想にも表れている気がします。ただ、東京と同じ軸に立つことにあまり意味はなく、日本という狭い範囲での序列の中に位置づける思考を捨てて、今こそ、大阪を今までなかった新たな軸で捉える必要があります。

現代社会に求められているのは、二項対立からの脱却です。常に変動し、不確実で、複雑で、曖昧な社会では、人々は安定を求めて「AかBか」という偏った思考に陥りがちになります。しかし、それでは今の多様な社会問題は解決できません。「AかBか」ではなく、「AもBも」「AとBの間」「AとBから生じるC」といった柔軟で寛容な考え方が求められます。「大阪か東京か」ではなく、「大阪も東京も」。新たな価値を生み出すには、多様な人たちとの「共創」が不可欠です。かつて商売の都だった大阪には、地域と地域、町と町とを結びつけるハブ機能がありました。現代なら、東京や関西一円、大阪と地方との結びつきはもちろんのこと、アジアなど世界各地との結びつきをより強くする役割が期待されるでしょう。

また、「商都大阪」は、文化そのものを生み出していた都市であったことも忘れてはいけません。小林一三、松下幸之助ら大阪が育てた稀代の経営者たちは、お金儲けの達人だったというより、新たな文化や時代を創造し、豊かさを具現化させたクリエイターでした。彼らのような新たな価値の提案によって時代をリードしていく人材を輩出できる土壌が、大阪にはもともと備わっていると言えます。社会問題の解決のために起業する社会起業家たちのチャレンジを、しっかり支援するような取り組みがこれからの大阪に求められていると言っていいでしょう。大阪には、そうした新たな価値創造の先頭を走ることのできるポテンシャルに溢れています。

「商都大阪から、社会に貢献する“人財”を輩出する」というフレーズには、大阪の発展はもとより、新たな視点、視角、視座に立って価値を生み出していくという強い思いが込められています。多様な人々が交流する場づくりを通して「創発」を起こそうとする大阪経済大学の試みが、次の時代に必要とされる「共創」を巻き起こしていくのです。