政策コンテストへの挑戦で実力を磨き、実証研究日本一のゼミへ。
経済学部の岡島ゼミ(シゲゼミ)は、2023年、日本政策学生会議(以下、ISFJ:「学生の政策提言による望ましい社会の実現」を理念とする学生シンクタンク)でみごと最優秀政策提言賞を受賞。念願であった「実証研究で日本一のゼミになる」という目標を達成しました。
経済学の視点から社会に対して疑問を呈し、統計データにもとづいて政策立案や政策判断、それらの因果関係について研究を行っている岡島ゼミ。先生が本学着任後、日本一になるまでの5年間においても、さまざまな大会で受賞を重ねてきました。背景には、どのようなゼミ活動やプロセスがあったのか、岡島成治先生に伺いました。
お話を伺った方
岡島 成治さん
大阪経済大学経済学部経済学科准教授。オハイオ州立大学応用経済学研究科環境経済学専攻修了。博士(応用経済学)。専門分野は経済学、経営学、環境経済学、応用ミクロ計量経済学およびその関連分野。
コンテストへの挑戦で得た学びで研究をブラッシュアップ
岡島ゼミでは、岡島先生とゼミ生たちが共同で社会課題解決のための研究に取り組み、ISFJをはじめとした研究発表のコンテストに参加。学内でも屈指の厳しさで知られ、中途半端な気持ちでは入れないことから、ゼミ生の研究に対する意識も高く、テーマを巡る議論が日々、積極的に交わされています。
「本学の学生は、やればできるんだという意識が弱いように感じます。無理だと思っていたことでも本気で正面からぶつかって取り組めば実現できるんだと信じられる人間になってほしい。それが、私がゼミでの研究活動をつうじて学生に伝えたいことです」
岡島ゼミの研究は、先輩たちが積み上げてきた研究結果をベースに次なる問いをたててブラッシュアップし発展させていきます。そのため、先輩の論文や先行研究を読んで理解するための知識が必要になります。そこで、岡島ゼミでは統計検定2級合格をゼミ研究に参画するための条件にしています。
「この条件を設定した当初は、他の先生から『そんな条件をクリアさせようとするなんて無謀だ』と言われたこともあります。でもこれまでの間、ほぼ全員が合格してきたことで、不可能ではないことを証明しました。また、検定合格への猛勉強をつうじて、前年に同じ苦労を経験した上級生が教えたり、同じ学年同士でも合格者が教える側にまわったりして、ゼミ内で学生同士の信頼や親密さが培われていきます。そして、検定合格という成功体験と苦行に立ち向かう先輩や仲間を得たゼミ生は、厳しい研究活動にも耐えられるようになります」
コンテストで勝つためにはチームワークが何よりも重要という岡島先生。チームワークにおいても、チームがめざす目的は何かを俯瞰でみて、その中で自分はどのような位置づけにあるのかを考えることを意識してほしいといいます。それが全員できるようになると、メンバーを信じて任せる、ということにもつながっていくようです。
「かつてメンバー同士で作業をうまく分担したAチームと、優秀な人が1人でなんでもやるワンマン状態のBというチームがそれぞれ研究を進めていたことがありました。Bチームはメンバー間の温度差がありすぎたことで、どんどん状態が悪くなってしまって。Aチームは当初作業が遅れていたのですが、分担することでうまく回るようになりました。チームの作業では、リーダー1人がすべてできる能力があったとしても、他のメンバーを信じて作業を任せることが大事です。そうすることでみんなが成長できますし、1人が作業を抱えると負担が大きすぎて絶対に焦りが生じます。チームの目的や自分の役割を理解し、互いを信頼して思いやれるチームというのは本当に強くなります。これは社会においても同じことがいえます」
ギリギリまで思いをぶつけ合う研究の日々
研究を進める中で岡島先生とゼミ生たちは、ゼロ距離ともいえる密接な関係を築きあげます。以前は岡島先生のアパートに全員で集まり、共同生活さながらの状態で研究を続けていたことも。
「私と学生の関係は基本的に対等です。教える立場だから偉いということはなく、時には私が学生たちの持ってきた情報で学ばせてもらうこともあります。コンテストや卒業研究の締め切り前は終電ギリギリまで作業にかかっているし、辞めたゼミ生が戻ってきて力を貸してくれることもあるなど、研究の現場では毎年ドラマが生まれます」
ISFJや他のコンテストでの入賞をめざす取り組みの中で、ゼミ生たちはさまざまな意見をぶつけ合います。議論が加熱する中で人間関係にも変化が訪れ、卒業まで緊張状態が続くことも珍しくありません。
「ゼミが始まる2年生の春頃は、みんなで食事や旅行に行くなど、まだ和気あいあいとした雰囲気が漂っています。しかし、もともと高い意識を持って岡島ゼミにやってきた人たちなので、本格的な研究が始まると、それぞれの意見を主張して揉めることも日常茶飯事。一致団結とは程遠い状態になります。ただ、これは私怨ではなく、良い研究を進めるための主張なので、あくまで前向きな揉め方です。その様子を見ながら私は班のリーダーをはじめ、さまざまな役割をゼミ生たちに割り振っていきます。本当に最後まで火花を散らしながらやっているので、ゼミ生たちの関係も卒業してすぐには元通りには戻りません。しかし、それでも苦労を共にした仲間なので、ある程度年月を置いて同窓会などで再会すれば、みんな楽しそうに思い出を語っていますね」
また、岡島ゼミは先輩・後輩だけでなく、教職員や卒業生、企業担当者など関係者の人数が多いことも特徴です。提言する解決策を検討する際は、現場の声を聴くために企業や小学校を訪れてヒアリングしたり、発表練習では他学部の教員や職員の前でプレゼンを行い、フィードバックを受けながらブラッシュアップしていきます。
国際舞台への進出も視野に
発足以来、ハードなトレーニングを重ねながら地力を強化してきた岡島ゼミは、コンテストでの入賞が続くようになり、着実に実績を重ねています。岡島先生自身も研究の質が上がっていると断言する中、現在はさらに高い目標に向かって進む準備が進められています。
「ISFJや国内のコンテストで実績を積んだ先のステップとして、ゼミ全体の研究を海外のジャーナルに継続的に投稿したいと思っています。現在は男女間の格差や自動車市場における不正行為、ESG投資などの研究に班ごとで取り組んでがんばっているところ。学生時代にちょっと集まって調べたことを発表しましたというものではなく、一つの研究機関として成果を海外にしっかり残していく。その体制づくりは、今後、日本のゼミのあり方においても重要になってきます。岡島ゼミの先輩たちが築いた実績や大阪経済大学での独自のコネクションを使って国内のトップ企業の人たちに話しを聞くことができるし、そういった利点はどんどん活用してほしいです」
2〜4年生の連携を強化し、卒業生と積極的に交流することでモチベーションを向上させたいという岡島先生。ゼミ生とは同志のような関係を築き、「一致団結には程遠い」という言葉とは裏腹にアットホームな環境づくりに注力していることが、コンテストで勝ち続ける要因ともいえるでしょう。今後、海外への進出も計画している岡島ゼミの展開に期待がかかります。
▼ ゼミ生のインタビュー記事はこちら
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